日本人ほどまぐろが好きな国民はいない。
だがその大半は生食であり、この店に訪れる客ほど、多様な魅力を知ってはいないのでなかろうか。
例えば、ゼラチン質に富むしっとりとした肉を、ポン酢で食べる尾肉のステーキ。
血合いの濃厚な味と優しい風味の部位が同居した、背ビレの唐揚げ。
噛むほどに味わいが滲み出る、顎肉のつけ焼き。脂身の少ないハムのような、香ばしい燻製など、その数約二十一種。
部位も、皮、カマ、頬肉など様々。いずれも奇をてらわず、素直に部位の持ち味を生かした仕事がなされているので、まぐろへの愛情が一段と深まる。
もちろん本まぐろによる刺身類も、脂のキレのよさと香りがある上質な刺身。しめには、胡麻ダレに漬けたまぐろの茶漬けか手こねずしをぜひ。
こうしてまぐろの隅々まで食べてこそ、世界一のまぐろ好き国民だと、堂々胸を張れるもんではなかろうか。